大判例

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東京地方裁判所 昭和43年(ワ)12369号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕昭和三六年六月一日、原告と被告大塚との間で、保証期間を同日から五年間、右期間満了の際に別段の申出がないときは、期間を同日から五年間として更新するという定めを含む被告藤田の身元保証契約が結ばれたことは、右当事者間に争いがない。同日、原告と被告平野との間で、保証期間を同日から五年間とする定めを含む被告藤田の身元保証契約が結ばれたことは右当事者間に争いがなく、右当事者間において被告平野作成名義の部分が真正に作成されたことに争いのない甲第二号証によると、原告と被告平野間の右身元保証契約にも、保証期間満了の際別段の申出がないときは、期間を五年間として契約を更新する旨の定めが含まれていたことが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない(以下、原告と被告大塚および被告平野との間の右各身元保証契約を「本件身元保証契約」という)。

そこで、被告大塚の、本件保証契約の更新についての約定は、身元保証法に違反するから無効であるという主張について考えてみるに、本件身元保証契約の更新についてその約定は、前記のとおり、五年の保証期間満了の際「別段申出がない限り」期間を五年として更新されるというものであるから、単に更新拒絶の意思表示をすることによつて更新を阻止することができることは原告の主張するとおりである。しかし、身元保証人は、親族、友人、知己、師弟等の関係に基く情義的動機によつて身元保証を引受けることが多く、また身元保証人としての具体的保証債務の発生が未必的、不確定的であるため、具体的保証債務の不発生を軽信し、軽率に身元保証を引受けることが多いことなどから、身元保証人が契約期間満了の時期を失念していることが多いであろうことは、容易に推測されることである。したがつて、前記のような本件身元保証契約の契約更新についての約定を、その文言どおりの効力を有するものと解するならば、身元保証人が契約期間の満了にあたつて、契約の更新を拒絶すべきか否かを実際に判断することがないまま契約更新の効果を生じ、事実上は身元保証契約の期間を一〇年と定めたのと同一に帰することが多いことになるであろう。したがつて、身元保証法第二条、第六条の法意に照らして考えると、前記のような本件身元保証契約の更新約定を、その文言どおりの効力を有するものと解することは相当でなく、右約定は、原告が身元保証人に対して、契約期間満了前の相当期間内に、契約期間満了時期および被保証人である被用者の任務、任地等、ならびに更新拒絶の意思表示がないときは契約が更新されることを通知し、身元保証人に契約の更新を拒絶すべきか否かを判断する機会を実際に得させた場合においてのみ、契約更新の効果を生じさせるという限度において効力を有するものと解するのが相当である(被告平野は、本件身元保証契約の更新約定の効力について特段の主張をしていないが、右の点は法律適用の問題であるから、原告と被告平野間の本件身元保証契約についても右のように解することは、何な弁論主義に反するものではない)。

ところで原告が被告大塚、同平野に対して、本件身元保証契約の約定期間満了日である昭和四一年五月三一日の前相当期間中に、前記のような通知をしたことについては何も主張、証拠がなく、かえつて証人…………によると、原告は右の通知をしていないことが認められるから、本件身元保証契約は、昭和四一年五月三一日、約定期間満了により更新されることなく終了したものといわなければならない。してみると、本件身元保証契約終了後に行われた被告藤田の本件不法行為による原告の損害については、被告大塚、同平野は身元保証人としての賠償義務を負わないものといわなければならない。(寺井忠)

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